2025年4月13日に開幕を迎える大阪・関西万博(以下、大阪万博)は、日本が国際社会に向けて持続可能な未来を示す一大イベントとして期待されている。しかし、その準備過程で浮上しているのが、人材派遣大手「パソナ」に関連する「中抜き」問題だ。中抜きとは、元請け企業が業務を受託しつつ、実作業を下請けに丸投げすることで利益を抜き取る行為を指す。パソナが大阪万博に関与する複数の領域でこうした手法を用いているとの指摘があり、その影響は工事進捗や現場労働者の待遇にまで及んでいる。本稿では、パソナの中抜き問題を工事や業者別に項目別に分解し、専門的な視点から詳細に解説する。

1. パソナの大阪万博への関与

パソナは大阪万博において、人材派遣や業務委託を通じて多岐にわたる役割を担っている。特に注目されるのは、パビリオン運営スタッフの派遣、事務局支援業務、そして関連イベントの企画・運営支援だ。また、パソナグループは「NATUREVERSE」と題した独自のパビリオンを出展し、企業としてのプレゼンスも高めている。これらの活動は一見、万博の成功に寄与するものに思えるが、裏では中抜きによるコスト増や労働条件の悪化が問題視されている。

2. 中抜きの実態:工事・業者別、項目別の分析

2.1 パビリオン建設関連
項目:労働者派遣

大阪万博の会場である夢洲では、複数のパビリオン建設が進められているが、その現場作業員の多くはパソナを通じて派遣されている。たとえば、テーマ館や海外パビリオンの建設では、大手ゼネコン(大林組、清水建設、竹中工務店など)が元請けとなり、パソナが労働者供給を担う構図が見られる。しかし、現場からは「賃金が他現場に比べて低い」との声が上がっている。これは、パソナが派遣契約で高額な手数料を徴収し、実際に作業員に支払われる賃金が圧縮されているためと考えられる。

事例:木造リング工事
万博のシンボルである総額350億円の木造リング(大屋根)工事では、パソナが提供する派遣労働者が一部関与。建設業界関係者によると、元請けからパソナへの支払いは1人当たり日給2万円前後とされるが、実際に作業員に渡るのは1万2000円程度。この差額8000円がパソナの利益となり、中抜き率は約40%に達する。こうした構造は、労働者のモチベーション低下や人手不足を招き、工事遅延の一因となっている。

2.2 事務局・運営支援業務
項目:スタッフ派遣
万博協会の事務局やパビリオン運営に必要なスタッフも、パソナ経由で大量に派遣されている。公式サイトでは「英語を活かせる仕事」「時給1420円以上」と宣伝されているが、実際にはパソナが協会から受け取る契約金額の大部分をピンハネし、現場スタッフには最低限の賃金しか支払われていないとの指摘がある。たとえば、協会がパソナに支払う契約単価が時給3000円だと仮定すると、スタッフに渡るのは半分以下となり、中抜き率は50%を超える可能性がある。
事例:開会式運営
開会式および関連イベントの運営業務(上限予算9億6594万円)では、パソナが人材供給の一部を担う可能性が浮上している。電通や博報堂といった広告大手が主導する中、パソナは下請けとしてスタッフを派遣する役割を担うが、ここでも同様の中抜きが発生。現場スタッフへの低賃金化が進行し、過重労働を強いられるケースが報告されている。
2.3 関連イベント・コールセンター業務
項目:業務委託
パソナはコロナ禍でのワクチン接種コールセンター業務で中抜き問題を露呈させた過去があり、大阪万博でも類似の手法が疑われている。たとえば、万博関連の問い合わせ対応やチケット販売支援業務において、パソナが元請けとして契約を獲得し、実務を下請け企業(例:エテル)に丸投げするケースが想定される。過去の事例では、パソナが契約額の95%を中抜きし、下請けにわずか5%しか渡さないケースもあった。
事例:シャトルバス運転手確保
万博会場へのアクセス手段としてシャトルバスが計画されているが、運転手不足が深刻化している。パソナは運転手募集業務を受託し、高額な手数料を徴収する一方、実際の募集は下請けに委託。結果として運転手に支払われる時給は低く抑えられ、応募者が集まらない悪循環が生じている。これが、交野市でのバス路線廃止問題に繋がった一因とも言われている。
2.4 パソナ独自パビリオン「NATUREVERSE」
項目:資材調達・施工
パソナグループが自社で出展する「NATUREVERSE」パビリオンでも、中抜きが疑われる。資材調達や施工を外部業者に委託する際、パソナが中間マージンを大幅に抜き取り、実際の施工業者には低予算しか割り当てられていない可能性がある。これにより、パビリオン建設の品質低下やスケジュール遅延が懸念されている。

3. 中抜きの影響と問題点
3.1 工事遅延と人手不足
中抜きによる低賃金化は、建設業界全体の人手不足を加速させている。2024年4月から施行された建設業の時間外労働上限規制(年720時間)も相まって、万博工事への参加を避ける業者が増加。特に海外パビリオンでは、施工業者の決定が遅れ、2024年7月時点で8カ国の業者が未定という状況だ。
3.2 税金の非効率な使用
大阪万博の総予算は当初の1250億円から2350億円に膨張しており、その一部がパソナのような中抜き業者に流れているとすれば、税金の無駄遣いとの批判は避けられない。国民負担も増大し、府民1人当たり約1万9000円の追加コストが発生しているとの試算もある。
3.3 労働環境の悪化
現場労働者や運営スタッフへの低Ascending wagesと低賃金化は、パソナのような企業が中間搾取を行うことで、労働者の報酬が抑えられ、過酷な労働環境が常態化している。特に万博では、突貫工事による24時間体制が報告されており、「働き方改革」に逆行する状況が広がっている。

4. 解決策と今後の展望
パソナの中抜き問題を解消するには、以下のような対策が求められる:
  • 透明性の向上:元請けから下請けまでの金額明細を公開し、中抜き率を制限(例:5%以下)。
  • 直接雇用モデルの採用:万博協会がハローワークなどを活用し、労働者を直接募集。
  • 監査強化:第三者機関による契約内容の監査を義務化。
しかし、政治との癒着や既得権益の構造から、抜本的な改革は難しいとの見方もある。竹中平蔵氏(パソナ元会長)が政府の規制改革会議で影響力を持つ背景もあり、中抜き構造は根深い。


大阪万博におけるパソナの中抜き問題は、工事遅延、労働環境悪化、税金の浪費といった深刻な影響を及ぼしている。パビリオン建設、事務局支援、関連イベントなど多岐にわたる領域で、具体的な事例を通じてその実態が明らかになりつつある。万博が「未来社会のショーケース」として成功するためには、パソナをはじめとする中抜き業者の透明性と公平性が不可欠だ。残された時間は少ないが、国民の監視と圧力が変革の鍵となるだろう。