日本政府が推進するIT関連政策は、デジタル化や経済成長を旗印に掲げる一方で、その実態は多重下請け構造による非効率性と品質低下に悩まされている。さらに、この構造を支え、時に意図的に温存する要因として、官僚や関係議員へのバックマージン(キックバック)が暗躍しているとの指摘が根強い。忖度なく現状を暴くならば、政府IT事業の失敗は単なる技術的失態ではなく、利権と癒着が絡んだ構造的腐敗の産物であると言わざるを得ない。以下、専門紙風にその実態を掘り下げる。

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多重下請けの裏側:利権ピラミッドとバックマージン
政府のIT事業において、大手SIer(システムインテグレーター)が入札を勝ち取り、下請け、孫請け、ひ孫請けへと業務が丸投げされる多重下請け構造は、業界の常識だ。しかし、この構造が効率性やコスト削減のためだけに存在するわけではない。複数の業界関係者や内部告発者によれば、大手SIerが元請けとして契約を獲得する過程で、官僚や関係議員への「裏金」が動いているケースが少なくない。これが、いわゆるバックマージンである。
具体的には、入札前の根回しや仕様書の調整段階で、特定の企業が有利になるよう官僚が介入し、その見返りとして金銭や接待が提供される。また、国会議員が地元企業や関連業界団体への利益誘導を図り、選挙資金や個人的な報酬を受け取る構図も浮かぶ。ある元SIer社員は匿名を条件に、「案件の3〜5%がキックバックとして戻ってくるのが暗黙のルールだった」と証言しており、これが事実なら、数百億円規模のプロジェクトでは数億円が裏で動いている計算になる。

癒着の証拠:マイナンバーやコロナ関連事業の不透明性
具体例として、マイナンバーシステムの開発や運用が挙げられる。2015年の制度開始以降、NTTデータや富士通といった大手SIerが巨額の契約を獲得したが、システムの不具合や個人情報漏洩が頻発。背景には、下請けへの丸投げによる品質低下に加え、入札過程での不透明な選定があったとされる。野党議員が国会で追及した際、関係省庁は「適正な手続き」と繰り返すのみで、詳細な入札資料の公開を拒否。業界内では「官僚が特定の企業に便宜を図り、その見返りを受け取っていたのは明らか」との声が上がるが、証拠が表に出ない限り、公的追及は難航する。
同様に、新型コロナウイルス対策で急ごしらえされた「COCOA」アプリや給付金システムでも、開発費の不自然な高騰や選定プロセスの曖昧さが問題視された。これらの案件でも、大手SIerが受注後、実作業を低コストの下請けに押し付けつつ、契約金額の一部が「調整費」名目で還流していた疑いが指摘されている。経済産業省OBの一人は、「政治家と官僚が絡む案件では、利権の配分が最初に決まる。それが下請け構造を複雑にし、末端にしわ寄せが行く」と暴露する。

入札制度の腐敗:価格優先と裏取引の共存
政府の公共調達では「最安値入札」が原則とされるが、実際には事前の根回しで勝者が決まる「出来レース」が横行しているとの批判がある。大手SIerは表向き低価格を提示しつつ、仕様変更や追加発注で予算を膨らませ、その一部を官僚や議員に還元する仕組みだ。これにより、本来の競争原理は形骸化し、実力ある中小企業や新興ベンチャーの参入が阻まれる。デジタル庁が掲げる「入札改革」も、こうした利権構造を打破する実効性に乏しく、形式的な改善に終始している。
公正取引委員会は下請けへの「買い叩き」を問題視するが、元請けと官僚・議員間の裏取引には踏み込めない。理由は明白だ。監督官庁自体が利権の当事者であり、自浄作用を期待するのは困難だからだ。

末端搾取と官僚の無責任:利権の果実を食む者たち
多重下請けの末端では、過酷な労働環境が常態化する一方、利権の果実はピラミッドの頂点に集中する。末端企業が薄利で請け負う中、元請けは利益を確保し、その一部が官僚や議員に還流。この構造が、IT人材の疲弊や海外流出を加速させ、日本のデジタル競争力を蝕んでいる。ある中小IT企業の経営者は、「我々が赤字で徹夜しても、上は飲み食いとゴルフに使う金に困らない」と憤る。
官僚側は責任を回避し、「業者選定は適正」「現場の管理はSIer任せ」と言い逃れに終始。議員も「地元への利益誘導は当然」と開き直るケースが多く、国民負担の増大やシステム崩壊への反省は見られない。

構造改革の絶望的展望:利権を壊せるか
バックマージンを根絶するには、入札プロセスの透明性確保や官僚・議員への監視強化が不可欠だが、現実は厳しい。政治資金規正法のザル状態や、情報公開請求への抵抗が続く限り、癒着の証拠は闇に葬られる。業界団体や有識者からは「第三者監査機関の設置」や「発注者側のITリテラシー向上」が提案されるが、利権に群がる勢力の抵抗は計り知れない。

腐敗の代償は国民が払う
日本政府のIT政策は、多重下請けとバックマージンという二重の病巣に侵されている。末端企業の搾取と品質低下は表層的な症状に過ぎず、その根底には官僚と議員の私腹を肥やす仕組みが横たわる。この腐敗を放置する限り、デジタル国家の夢は遠のき、崩壊の代償は税金と国民の不信として跳ね返る。問われるべきは、誰がこの利権を守り、誰がそのツケを払うのかだ。