ナフサ・エチレン不足の真相
多層流通支配構造の解析
「完全欠乏」という一枚岩の報道は誤りである。
工場には在庫が存在するにもかかわらず、なぜ現場は「全然足りない」と叫ぶのか。
投機目的の出し渋りと、総合商社が支配する流通の目詰まりを解明する。
供給構造の誤認と現場の違和感
この話で重要なのは、「ナフサ不足」という言葉だけで全体を一枚岩として見てしまうと、実際の供給構造を見誤る点です。化学業界は、単純に「ある/ない」で動いていません。ナフサ→エチレン→樹脂・界面活性剤・包装材という流れは巨大な連鎖です。シャンプーで言えば、ボトル、キャップ、フィルム、ポンプ、ラベルまで石化系原料に依存しています。
現場で実際に起きている現象
「工場に原料在庫がある」ことと、「市場へ通常通り流れる」ことは別問題です。実際には以下のような事態が連鎖しています。
- 将来不安を理由に商社や中間流通が在庫を厚く持つ
- メーカー側が安全在庫を積み増す
- 一部が価格上昇期待で出荷タイミングを遅らせる
- 「念のため発注」が連鎖し、見かけ需要が膨張する
- 本当の実需以上に需給逼迫感が演出される
これは半導体でも銅でも過去に起きています。特に石化は「停止すると再起動コストが重い」ため過敏になります。結果、 「倉庫にはあるのに、流れてこない」という状態が発生します。営業担当者が感じている違和感の正体は、「完全欠乏」ではなく 「流通段階で滞留・抱え込み・様子見が起きている」状態です。
心理先行型の供給圧縮(自己増幅サイクル)
エチレン系は典型的な市況産業であり、価格期待そのものが市場行動を変えます。「これから不足する」→「今は売らずに持つ」→「流通量が減る」→「さらに不足感が強まる」という自己増幅が起きやすく、米騒動における心理先行型の供給圧縮と酷似しています。
図:心理先行による実需と見かけの需要(逼迫感)の乖離シミュレーション
現場を混乱させる「部分的制約」
現実には「完全停止」ではなく、以下のような部分的制約が多いのも重要です。工場側に在庫があっても、自由に市場へ出せない理由がここにあります。
| 制約の要因 | 現場営業の見え方 | 実態(第一原理) |
|---|---|---|
| 特定グレード・添加剤の不足 | 「全然足りない、作れない」 | 主力原料はあるが、配合に必須の微量成分が欠品し出荷停止 |
| 容器・輸送の物理的遅延 | 「納期が全く読めない」 | 中身は完成しているが、運ぶ手段や詰める箱がない |
| 契約優先によるスポット停止 | 「市場からモノが消えた」 | 大口提携先へは流れているが、一般市場への放出を完全に遮断 |
| 情報発信のねじれ | メディアは「不足」、政府は「安定」 | 流通は様子見を決め込み、中間業者は価格を探る歪な状態 |
収奪構造を形成する多層流通支配(犯人層)
ナフサ・エチレン不足と値上げの犯人は、総合商社と石化資本が中心となった多層流通支配構造です。工場に在庫が存在し、代替輸入が進む状況で川下供給を意図的に目詰まりさせ、日用品価格を押し上げる収奪が進行中です。
市場を操作する巨大プレイヤーたち
| 層 | 主要企業例 | 実行している役割・現象 |
|---|---|---|
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一次犯人層
(総合商社) |
三菱商事, 三井物産, 伊藤忠商事, 住友商事, 丸紅 | ナフサ輸入・在庫管理を支配。代替輸入船便を手配しつつ、外部放出タイミングで価格を操作。曖昧な流通網で提携外への流出を可能にする。 |
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二次犯人層
(石化・樹脂商社) |
長瀬産業, 稲畑産業, 阪和興業 | 一次商社から流れる過程で在庫を滞留。スポット取引や転売で価格裁定を実行し、加工業者への供給を意図的に制限。 |
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元売・実行役
(クラッカー) |
三菱ケミカル, 三井化学, 出光興産, ENEOS, 住友化学 | 稼働率を過去最低水準に抑え減産を連鎖。在庫温存と価格高騰を活用し、契約優先を名目に国内川下を絞める。 |
図:プレイヤー層別の市場支配力と価格操作影響度の比較
現場営業が 「知らない奴らが触ってる」と感じるのは、この多層構造(タンク在庫業者、海運ブローカー、海外トレーダー、転売系仲介)を指しています。必ずしも悪意ある投機だけでなく、与信不安や輸送遅延が重なり、「市場に出てこない」状態が作られます。
多層流通による目詰まりの具体的な流れ
特に需給不安時は、途中のプロセスで在庫滞留が起きやすく、現場から見ると「工場にはあるのに末端へ来ない」という事態が固定化されます。
供給減衰のプロセス
- 【1. メーカー】 毎月100単位生産(減産基調)
- 【2. 一次商社】 戦略的保持と海外向け優先で流通量を絞る
- 【3. 二次卸・転売仲介】 価格改定待ち・様子見でタンクに滞留
- 【4. 地域問屋・加工業者】 与信調整・過剰発注の錯綜
- 【5. 末端市場】 シャンプー・包装材の納品遅延、結果として40単位しか届かない
図:流通段階を経るごとの供給可能量(市場放出量)の減衰イメージ
この構造は、化学資本・商社・金融投機が連動した恒常的収奪モデルです。在庫が存在し代替船が入荷しても、この 多層目詰まりが解消されなければ、夏の高騰→価格据え置きによる国民貧困化は避けられません。
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