SHR 2本構成 容量増加メカニズム

SynologyのSHR 2本構成 容量増加のメカニズム

2ベイNASにおけるSHR(RAID1相当)の定期交換において、容量は1本交換では増加しません。
2本目を大容量に交換完了した時点で、初めて全体の容量が拡張される設計を解説します。

1本交換時
即時効果ゼロ
容量は増加しない
余剰チャンク無効
新しい大容量ドライブの超過分は保護されず、死に領域となります。
2本目交換時
容量急増
リビルド完了後
最小容量の統一
両方のドライブが大容量に揃うことで、余剰チャンクが有効化されます。
内部動作の制約
最小ドライブ縛り
ミラーの性質
完全な複製
データは常に2箇所に複製されるため、小さい側の容量に制限されます。
最適な手順
同時購入推奨
停滞期間の回避
順次即時交換
1本交換後の停滞状態を防ぐため、2本用意して連続でリビルドを行います。
2ベイの限界
生涯ミラー維持
1障害耐性のみ
RAID5移行不可
SHR-1(RAID5相当)の効率化には最低3本が必要なため、2ベイでは実現しません。

SHR 2本構成での容量変化メカニズム

SHRは全ドライブをチャンク(細分化されたブロック)単位で分割し、各チャンクをミラーリングで保護します。2本構成の場合、利用可能な容量は常に 「最小ドライブの有効容量」 小さい方のHDD容量が基準となり、それを超える部分は無視されます。 に依存します。

  • 大容量ドライブに1本交換しても、パートナーが小容量のままでは超過分が保護対象外(死に領域化)となります。
  • 2本目も大容量に交換しリビルドが完了すると、両者の最小容量が引き上げられ、死に領域がすべて有効活用されます。

図:8TBから18TBへの段階的交換における利用可能容量と死に領域の推移

具体例:初期8TB×2からの段階的交換

実測値ベースでの交換手順と内部の挙動を示します。

段階 構成 (HDD A + HDD B) 交換内容 使用可能容量 容量変化の理由
初期 8TB + 8TB - 約7.2TB 両側同容量での完全ミラーリング
1本目交換後 18TB + 8TB 1本目を18TBに交換、リビルド完了 約7.2TB
(変化なし)
小さい側(8TB)に縛られ、18TB側の余剰10TB分が無効
2本目交換後 18TB + 18TB 残り1本を18TBに交換、リビルド完了 約16TB
(急増)
最小容量が18TBに引き上げられ、全余剰チャンクが有効化
さらに交換 30TB + 30TB 両方を順次30TBに交換 約27TB超 全チャンクが大容量側で保護され、死に領域ゼロを維持

なぜ1本交換で容量が増えないのか

ミラーリングの原則として、データは常に2箇所に複製される必要があります。大容量ドライブを挿入した際、システムは新しいチャンクに古いデータを修復コピーしますが、全体の利用可能領域の計算は「全ドライブの最小有効容量」で行われます。

根本的なルール

1本だけ大容量であっても、ミラーパートナーが小さい限り、データ保護の整合性を保つために容量は停滞します。Synology公式情報においても、「既存ドライブ容量がすべて同じ場合、容量拡張には最低2台交換が必要」と明記されています。

図:18TB + 8TB構成時の18TBドライブ内部の領域割合(保護対象外の死に領域が発生)

2本構成特有の運用現実

  • 最適交換手順 新しい大容量HDDを2本同時に購入し、1本目の交換・リビルドが完了した直後に2本目を交換することが、即座に容量を増加させる最善の手段です。
  • 容量停滞期間 1本ずつ期間を空けて交換した場合、中間期間(数日〜数週間)は容量が一切増えません。データ増加が緩やかな環境では許容されますが、急を要する場合は同時手配が推奨されます。
  • リビルド時間 8TBから18TBへのリビルドにはおおよそ12〜24時間、30TBへの交換では30〜50時間を要する場合があります(データ量やHDD性能に依存します)。
  • 2ベイの制約 効率的なSHR-1(RAID5相当)へ移行するには最低3本のドライブが必要です。2ベイ機では生涯ミラーリングによる1障害耐性に留まります。

SHR 2-3本構成の10年運用メカニズム

SHRは2-3本構成であっても、10年単位の長期運用従来のRAIDでは2-3ベイ機種が事実上「買い替え前提」になるが、SHRは同一機種内でディスクを入れ替え・追加しながら容量を積み上げられる構造で容量を段階的に増やし続けられる唯一の現実解です。

図:SHR 2-3本構成での10年運用における容量推移

段階 構成例(2ベイまたは3ベイ機種) SHRの実運用挙動 従来RAIDとの決定的差 10年スパンでの現実的容量推移例
初期(年0-2) 2本:8TB + 8TB SHR(RAID1相当)→ 使用可能容量約7.2TB 同一 スタート容量7-8TB
年2-4:1本交換 古い8TBを18TBに交換 自動でRAID1を維持しつつ容量を18TB側に寄せる → 使用可能容量約16TB 従来RAID1なら交換しても8TB止まり 16TBへ倍増
年4-6:2本目交換 残り8TBを22TBに交換 自動でRAID1 → 使用可能容量約20TB 同一 20TBへ
年6-8:3ベイ機へ移行 or 3本目追加 20TB + 22TB + 22TB(新規追加) 自動でSHR-1(RAID5相当)に昇格 → 使用可能容量約40TB(パリティ1本分) 従来RAIDなら3本追加でRAID5にするにも全再構築必須 40TBへ急拡大
年8-10:さらに交換・追加 古い20TBを30TBに交換 → さらに30TB追加(可能なら) SHR-1継続 or SHR-2へ変更可能(4本以上必要)→ 使用可能容量50-60TB超 従来RAID5/6では容量差で死に領域爆増 最終60TB超クラス

2-3本限定で10年持つ具体的な理由

  • 柔軟な昇格

    1本から始めても、2本目を追加すれば自動的にミラー化。さらに3ベイ機へ移行して3本目を加えれば、すぐにRAID5相当へ切り替え可能です。

  • 容量効率

    異なる容量のHDDを組み合わせても無駄が少なく、例えば18TBと30TBの組み合わせなら約17TBを利用可能。大容量側の多くが保護されます。

  • 高速再構築

    HDD交換時は新しい領域だけを再構築するため、従来RAIDのように全容量を再ストライピングする必要がなく、数時間〜1日程度で完了するケースが多いです。

  • 保護拡張

    最初は1障害耐性(SHR-1)で運用し、後から必要に応じて2障害耐性(SHR-2)へ移行可能。最低4本必要ですが、3本時でもSHR-1で安全に運用できます。

図:SHRと従来RAIDの10年運用における容量比較

10年運用で現実的に起こる容量増加パターン

  • スタート:2ベイ機 + 10TB×2 → 約9TB
  • 3年後:1本を20TB交換 → 約18TB
  • 5年後:残り1本を24TB交換 → 約22TB
  • 6年後:3ベイ機へ移行 + 24TB×1追加 → SHR-1で約44TB
  • 8年後:古い20TBを30TB交換 → 約52TB
  • 10年後:さらに30TB交換/追加 → 60-70TBクラス

→ 10年で初期の7-8倍以上の容量を同一論理ボリュームで維持・拡張可能。

SHR データスクラビングの全貌

SHRで長期保存を行う場合、データスクラビング保存データを全ブロック読み出し、ビット単位で劣化(ビットロット)を検知・修復する保守作業は必須の防御線となる。2台構成では実質無力化されるため、構造的な限界が明確に存在する。

図:構成ごとのビットロット耐性レベル(スクラビング有効度)

SHRでデータスクラビングが使える条件

データスクラビングの必須条件

  • 3台以上の物理ドライブ SHR-1またはSHR-2でRAIDレベルのスクラブが初めて機能する。2台ではファイルシステムチェックサムのみで限定的。
  • Btrfs + チェックサム有効化 各共有フォルダで「高度なデータ整合性のためのデータチェックサム」を必ずオンにする。オフでは検知自体が不可能。
  • 月1回以上の定期実行 放置すると複数ブロックの劣化が蓄積し、1台故障で修復不能領域が爆発的に増加する。

スクラビングの2段階構造

  • ファイルシステムスクラブ(Btrfs) すべてのファイルを読み出し、チェックサム不一致を検知 → SHRのパリティから即時修復。修復不能ファイルはログ記録。
  • RAIDスクラブ(ストレージプール) 全ブロックのパリティ整合性を再計算。隠れエラーを発見し、パリティからデータ再構築。3台以上でしか動作しない。
構成 ファイルシステムスクラブ RAIDスクラブ 総合ビットロット耐性 現実的リスク
2台 SHR チェックサム有効時のみ部分対応 完全に無効 極めて低い 静的データ劣化で複数ファイル消失が頻発
3〜4台 SHR-1 フル機能 フル機能 高い 月1スクラブでほぼ完全防御
4台以上 SHR-2 フル機能 強化修復力 最高レベル 2台同時故障でも修復可能

実運用での所要時間と負荷

NASモデル例 HDD構成 所要時間目安 負荷状況 運用推奨
DS224+ / DS423+ 4台 × 8TB SHR 18〜48時間 CPU 30〜70%、全HDD稼働 中速で週末実行
DS1522+ 5台 × 12TB SHR-1 2〜5日 高速時はNASほぼ使用不可 低速+平日一時停止設定
DS1821+ 8台 × 18TB SHR-2 3〜7日 ファン全速、温度50℃超 月1回高速実行が現実的

2台SHRの致命的欠陥

RAIDスクラブが永久に実行できないため、ビットロットによる静的データ破損が蓄積し続ける。家族写真・重要書類の長期保存を目的とする場合、2台構成は構造的に不適格である。最低3台+Btrfsチェックサム+月1スクラブがSHRの本質的な防御ラインとなる。

よくある質問 (FAQ)

swap_horiz 1本だけ大きいHDDに交換したらどうなりますか? expand_more
リビルド処理自体は正常に実行され、システムは復旧します。しかし、利用可能な全体容量は元の小さいHDDの容量に縛られるため一切増えません。大容量側の超過分は保護されない死に領域となります。
timelapse どのタイミングで実際に容量が増えるのですか? expand_more
2本目のHDDも同等以上の大容量ドライブに交換し、そのリビルドが100%完了した直後に、システムの最小容量判定が引き上げられ、全体の利用可能容量が急激に増加します。
schedule 1本ずつ数ヶ月あけて交換しても大丈夫ですか? expand_more
動作上の問題はありません。ただし、1本目交換から2本目交換が完了するまでの数ヶ月間は、容量が全く増えない「停滞期間」となります。既存の空き容量が逼迫している場合は注意が必要です。
storage 2ベイNASでも容量効率の良い構成にできますか? expand_more
できません。SHRにおいて容量効率を向上させる(RAID 5相当の動作にする)には、物理的に最低3本のドライブが必要です。2ベイNASの場合は常にRAID 1相当のミラーリング動作となり、利用可能容量はドライブ総容量の半分(片側分)となります。